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にゃももしばぬん先生、最近わたしの友達が「東京の家賃がえげつないことになってる」ってずっと騒いでるの。2〜3年前と同じ部屋なのに、募集価格が3万円上がってるとかって……。そんなの本当にあるの?



あるんだよ、にゃもも。しかも、それは都心だけの話じゃないの。2023年から2026年にかけての東京23区の家賃上昇は、戦後の住宅統計でも類を見ないレベルなんだ。感覚じゃなくて、データでもはっきり出ているね。



えっ、そんなレベルなの!?



今日はこの「東京の家賃がなぜこんなに上がったのか」を、6つの構造要因に分解して解剖していくよ。ここを理解しておかないと、「これからどうなるのか」「自分はどう動けばいいのか」の判断ができないからね。



6つも!? 多いなぁ……でも、なんで1つじゃなくて6つもあるの?



いい質問だよ。家賃がこれだけ急に上がったのは、単一の原因じゃないの。6つの要因が同時に作用して、しかもお互いを増幅し合って、結果として爆発的な上昇になったんだ。1つずつはそれほど強くなくても、同時に働くと爆発する――それが今回の本質だよ。
1. 2023→2026年で家賃は1.2〜1.5倍。何が起きたのか



まず実態を数字で押さえよう。不動産経済研究所と主要ポータル(SUUMO/LIFULL HOME’S)の公開相場をクロスチェックすると、こんな数字が出てくるの。
| エリア | 2023年初頭 | 2026年初頭 | 変化率 |
|——–|———–|———–|——–|
| 港区1LDK | 約22万円 | 約31万円 | +41% |
| 渋谷区1LDK | 約19万円 | 約26万円 | +37% |
| 世田谷区1LDK | 約14万円 | 約18万円 | +29% |
| 練馬区1LDK | 約10万円 | 約13万円 | +30% |
| 足立区1LDK | 約8.5万円 | 約11万円 | +29% |



……都心だけじゃなくて、周辺区まで3割上がってるの!?



そうなの。ここが今回の最大のポイントだね。都心だけじゃなく、23区の「ほぼ全部」が同じペースで上がっている。賃金が同じだけ上がっていればまだいいんだけど、国税庁の民間給与実態統計を見ると、東京の平均年収の上昇は2023→2026年でせいぜい5〜7%。つまり、家賃の上がり方が賃金の5倍のペースで進んでいるってことだよ。



賃金の5倍!? それってもう、住める人を選別してるってこと……?



正解だね。実際、2025年以降の23区の新規契約層は、年収700万円以上か、海外からの駐在員・投資家層にシフトしている。普通の会社員が「都内の駅近1LDK」に住める時代は、ほぼ終わりかけているの。



じゃあ、なんでここまで上がったの? 誰かが悪者なの?



悪者がいるわけじゃないんだ。構造的な要因が6つ、同時に噛み合った結果なの。1つずつ見ていこう。
2. 要因1:海外マネーの流入——円安が「東京を半額セール」にした



要因の1つ目は、円安による海外マネーの流入。これが最大のドライバーだね。



円安って、輸入品が高くなる話じゃなかったの?



それは消費者目線の話なの。逆の視点、つまり「ドルを持ってる人から見た日本」を考えてみてね。2022年初頭は1ドル=約115円。2024年には一時160円を突破して、2026年初頭も1ドル=150〜155円のレンジで推移している。つまり、ドル建てで見ると東京の不動産は2〜3年前の7割の値段で買える状態が長く続いているんだ。



それってバーゲンセールじゃん……。



まさに「TOKYO SALE」だね。しかもこれは単なる値札の話じゃなくて、投資利回りの計算にも効いてくるの。
- シンガポール・香港・上海の中心部と比較して、東京の高級物件は坪単価が半額以下
- アジアの富裕層・ファミリーオフィスから見ると「安全資産+為替で割安+賃貸利回り3〜4%」
- 英米のREIT・プライベートファンドにとっても「利回り物件としての東京」が魅力的
結果、2023〜2025年の都心新築マンション購入者のうち、海外投資家比率が推定20〜35%まで跳ね上がった(不動産経済研究所・主要仲介大手の推計)。港区・中央区のタワマンは、一次取得者が外国人名義というケースが珍しくなくなったね。



じゃあ……日本人が日本人に売ってる市場じゃなくなってるんだ。



その通りなの。価格を決めているのは、もはや日本の賃金じゃなく、海外投資家の利回り計算になっているんだ。ここが構造変化の本質だよ。日本人の生活実感と関係ない論理で、値段が決まっていくわけ。
3. 要因2:建築コストの急騰——資材・人件費が2割以上上がった



要因2は供給側のコスト上昇だね。建築工事費デフレーター(国交省)で見ると、2020年を100としたとき、2026年初頭は125〜130まで上がっているの。



3割近いじゃん! なんでそんなに上がったの?



複数の要因が重なっているよ。
- 鋼材・セメント:ウクライナ情勢と中国需要でピーク時2倍、2026年時点でも1.4倍水準
- 木材(ウッドショック残滓):2021年以降、輸入材が1.5〜1.8倍
- 建設労働者の賃金:2024年以降の「2024年問題」(時間外労働規制)で人件費+20%
- 電気・ガス代(現場コスト):エネルギー価格高騰で+30%



資材も人件費もエネルギーも、全部同時に上がってるんだ……。



そうなの。しかもこれらは「一時的な値上げ」じゃなくて、構造的な変化なんだ。2024年問題は法律で決まった規制だから元に戻らないし、エネルギー価格は地政学リスクの影響で高止まりしている。



じゃあ、新築価格を上げざるを得ないってこと……?



そうだね。建てる側が赤字になるなら、そもそも新築は供給されない。だからデベロッパーは「価格を上げるか、戸数を絞るか」を迫られて、結果的に両方やった。これが次の要因3・要因4につながってくるんだ。
4. 要因3:訪日客・外国人居住の急増——実需そのものが増えた



要因3は需要側の膨張だね。供給側がコストで苦しんでいるときに、需要側は逆に爆発していたの。



需要って、東京に住みたい人が増えたってこと?



2つのレイヤーがあるよ。観光(短期滞在)と居住(中長期)だね。
① 観光需要
- 2024年の訪日外国人数は約3,687万人(過去最高)
- 2025年はさらに4,000万人超えのペースで推移、2026年は4,200万人予測
- 都心のホテル稼働率は常時85〜90%、平均客室単価は2019年比で+60%
② 居住需要
- 高度人材ビザ(J-Skipなど)の緩和で、2024年以降アジア圏のIT人材・金融人材の流入加速
- 中国・香港からの「居住目的」移住が顕著に増加
- 2025年末時点で東京都の外国人住民は70万人を突破(都の人口の約5%)



観光客が増えたのが、なんで家賃に効くの?



民泊・ホテル用途への転用で効いてくるの。都心の1棟マンションや古い戸建てが、どんどん宿泊施設に化けているんだ。結果、賃貸在庫そのものが減る。そこに外国人居住需要が乗れば、価格が上がらないわけがないね。



つまり「住宅の椅子取りゲーム」の椅子が減ってて、しかもプレイヤーが増えてる……。



その理解で正解だよ。椅子が減った上に、プレイヤーが倍になった状態。しかもそのプレイヤーには、日本人の家計では太刀打ちできない海外富裕層が混ざっているの。
5. 要因4:新築供給の絞り込み——用地難とデベロッパー戦略



要因4は供給の絞り込み。ここは意外と知られていないんだけど、2023〜2025年の首都圏新築マンション供給戸数は、バブル期の約3分の1しかないんだよ。



3分の1!? そんなに少ないの!?



理由は3つあるね。
① 用地の枯渇
都心5区の大規模開発用地は、もうほぼ出尽くした。虎ノ門・麻布台・八重洲の巨大再開発が終わった後、その次の「スーパーブロック」が出てこないの。
② 法規制の強化
日影規制・景観条例・容積率見直しで、以前のように「建てたいだけ建てる」ができなくなった。特に住環境への配慮が強化されて、高層化のハードルが上がっているね。
③ デベロッパーの戦略転換
大手デベ(三井不・三菱地所・野村不など)は、「量から質へ」シフト。戸数を絞って高単価で売る方が利益率が高いと判断したんだ。



じゃあ意図的に絞ってる側面もあるんだ。



そうなの。需要があっても、あえて供給を増やさない。これは企業として合理的な判断なんだけど、需要者(=住みたい人)から見ると地獄だね。在庫不足で価格は高止まり、中古価格まで連動して上がっていく。



建てる気があるのに建てないって、なんか変な感じ……。



でも株主に対しては「高単価・高利益率」を示した方が評価される。市場原理としては正しい判断なの。ここが「自由市場では解決できない構造問題」のひとつだね。
6. 要因5:中古マンションの投資対象化——住む家が「金融商品」になった



要因5が、個人的にはいちばん重大だと思っているよ。中古マンションの投資商品化だね。



中古が投資対象? 住むものじゃないの?



2020年頃までは、中古マンションは「新築より安い住居」だったんだ。ところが2023年以降、構造がガラッと変わったの。
- 新築が高騰しすぎて、中古の相対的割安感が出た
- 不動産投資クラウドファンディング・REITの拡大で「小口でマンション投資」が可能に
- YouTubeやSNSで「築古リノベ転売」「賃貸利回り8%」といった情報が拡散
- 金利は依然として低水準で、レバレッジを効かせやすい
この結果、居住目的じゃない中古マンション保有者が激増した。過去記事の「いまの不動産は非効率」でも触れたけど、住まいとしての実用性より、転売益と利回りで価格が決まる時代に入っているの。



じゃあ「家」じゃなくて「金融商品」なんだ……。



そうなの。そして金融商品化すると、相場は期待値で動く。「これから上がる」と誰もが思えば、上がる。逆に「もう頭打ち」と思われた瞬間、一気に崩れるんだ。



それって、株みたいに急に暴落もあり得るってこと?



十分あり得るね。居住目的の買い手は「住むため」だから相場が下がってもすぐ売らないけど、投資目的の買い手は「利回りが合わなくなった瞬間」に一斉に売るんだ。中古市場が投資家比率を高めた今、相場の不安定さも過去とは比べものにならないよ。
7. 要因6:リモートが定着しなかった日本固有の復元力



最後の要因6は、日本特有の話だね。リモートワークが定着しなかった。



えっ、コロナのときはあんなに普及したのに?



2020〜2022年の一時期、東京23区からの転出超過が話題になったよね。「都心離れが始まる」ってメディアも煽った。ところが、現実はこうなったの。
- 2023年以降、大手企業の多くが週3〜5日出社へ回帰
- 「対面での評価」「管理職のマネジメント文化」が結局戻った
- 欧米企業と違い、在宅者の昇進・昇給が明確に不利になる運用が残った
結果、2024〜2025年の23区は再び転入超過に。過去記事の「物価上昇と質の低下」とも関係するけど、「東京に住まないと仕事にならない」という構造が温存されたんだね。



じゃあ海外みたいに「リモートで地方に住む」って流れが、日本ではあんまり続かなかった……?



少数派にとどまったの。一部のIT・クリエイティブ職を除けば、大多数はオフィス回帰した。これが東京の賃貸需要を下支えしたんだ。供給絞り込み+需要回帰=家賃はさらに上がる、というシンプルな式だね。



欧米だと、リモートで田舎に移住した人がそのままなんでしょ?



そうだよ。米国では2020〜2023年にかけて、SF・NY・ボストンなど大都市から中堅都市への人口移動が定着したの。日本はそれをやり損ねた。「リモート定着失敗」が、東京への需要を押し戻した隠れた大きな要因なんだね。
8. 6要因の相互作用——なぜ「同時に」起きたのか



先生、6つの要因、全部つながってるよね。なんでこんなに同時に起きたの?



とてもいい質問だよ、にゃもも。この6つは、バラバラに起きたわけじゃなくて、お互いが原因と結果になって加速し合ったんだ。図にするとこんな感じだね。
“`
円安(要因1)
↓ 海外マネーが流入
都心不動産への投資需要増
↓ デベロッパーは高単価路線へ
新築供給の絞り込み(要因4)
↓ 在庫不足
中古への需要シフト → 中古の投資商品化(要因5)
↓
同時に、建築コスト上昇(要因2)で新築も値上がり
↓
さらに訪日客・外国人居住増(要因3)で実需も膨張
↓
リモート失敗(要因6)で「東京に住む」需要が温存
↓
すべてが価格上昇圧力として同時作用
“`



……ドミノ倒しどころか、全方向から火がついてる感じ。



まさにそうなの。単発の要因ではなく、6つが同時かつ相互強化的に働いたのが2023〜2026年の東京なんだ。だから過去の不動産上昇期(2006年ミニバブル、2013年アベノミクスなど)とは質が違うの。



どう違うの?



過去の上昇は「国内の金融緩和」が主因だった。日銀が金利を下げる・ETFを買う、といった1つの変数が動いて、それが不動産に波及する構造だったの。だから金融政策が反転すれば相場も落ち着いた。
でも今回は6つの変数が同時に動いているから、1つや2つが反転しても全体は止まらない。例えば円安が止まっても、建築コスト・外国人居住・供給絞りは残る。構造が複雑化した分、相場も粘り強く上がり続けるんだ。



でも逆に、複雑だから崩れるときも一気に崩れるんじゃないの……?



鋭い指摘だね。その通りなんだよ。複数の要因が同時に順張りしているときは相場も強いけど、複数が同時に反転し始めると、今度は逆方向に一気に動く。このリスクについては、姉妹記事の方で詳しく扱っているよ。
9. まとめ:東京バブルは「偶然」ではなく「必然の構造」



今日のポイントをまとめるね。
1. 実態:2023→2026年で23区の家賃は1.2〜1.5倍。賃金の5倍のペースで上昇
2. 要因1:円安による海外マネー流入。ドル建てで見ると「TOKYO SALE」状態
3. 要因2:建築コストの急騰。資材・人件費で工事費が2〜3割上昇
4. 要因3:訪日客4,000万人+外国人居住70万人で実需そのものが膨張
5. 要因4:新築供給はバブル期の3分の1。用地難+デベロッパー戦略
6. 要因5:中古マンションが金融商品化。住まいではなく投資対象に
7. 要因6:リモートが定着せず、オフィス回帰で東京需要が再強化
8. 相互作用:6要因が同時に働き、お互いを加速させる構造



「なんとなく高い」じゃなくて、構造として高くなる仕組みがあったんだね……。



そうなんだよ。東京の家賃・不動産高騰は、誰か1人が悪いわけでも、運が悪かったわけでもないの。6つの構造要因が同時に作用した、必然の結果なんだ。



でも先生、ここまで聞くとすごく不安になるんだけど……これっていつまで続くの? 自分たちはどうすればいいの?



それこそが一番大事な問いだね。構造を理解したら、次は「この構造がいつ反転するか」「反転したときに自分がどう動くか」を考えなきゃいけない。ここは1本の記事で扱いきれないから、姉妹記事で詳しく解説しているよ。
→ 姉妹記事:【ピーク予測・対策編】東京の家賃バブルはいつ崩れる?個人がいま取るべき3つの選択肢



そっちも読まなきゃ! 構造だけわかっても、自分の行動に落ちないと意味ないもんね。



その通りなの。構造を知ることと、行動を選ぶことはセットだよ。今日の6要因の話は「なぜ起きたのか」のパート。姉妹記事は「これからどうなるか」「自分は何をすべきか」のパート。両方読んで、はじめて「情報を持った側」に立てるんだ。



うん、わかった。今日の話を頭に入れて、姉妹記事も読んでくるね!



いい姿勢だよ、にゃもも。住む場所は、生き方を規定する最大の固定費なの。構造を理解した上で、自分の人生の選択をしてほしい。それが今日のメッセージだね。
出典一覧
- 不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」各年版
- 国土交通省「建築工事費デフレーター」「住宅着工統計」
- 総務省統計局「人口移動報告」「住民基本台帳人口」
- 国税庁「民間給与実態統計調査」
- 観光庁「訪日外国人消費動向調査」
- 日本銀行「金融政策決定会合議事要旨」
- 出入国在留管理庁「在留外国人統計」
- SUUMO/LIFULL HOME’S/at home 公開相場(2023〜2026年)
関連記事
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- いまの不動産は非効率——住まいと投資の境界が壊れた時代
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