PCショップやBTOサイトを見ていると、ゲーミングPCに使われているCPUが「Core i5」「Core i7」「Ryzen 5」「Ryzen 7」ばかりで、「Core i3」や「Ryzen 3」がほぼ存在しないことに気づきます。エントリーモデルのゲーミングPCでも「5」や「7」から始まるのはなぜなのか。その理由を詳しく解説します。
アクアゲーミングPCを安く買おうとしたら、どこを見ても「i5」や「Ryzen 5」からしか出てこなかったんだよね。「3」のモデルがあればもっと安くなりそうなのに、なぜないんだろう?
販売しているBTOもほぼ全部「5」以上
2026年4月時点で、主要なBTOメーカー(パソコン工房・ドスパラ・マウスコンピューター・G-Tune)のゲーミングPCラインナップを見ると、搭載されているCPUの最低ラインは「Core i5」または「Ryzen 5」です。エントリーモデルでも最下限がここからスタートしており、Core i3やRyzen 3搭載のゲーミングPCはほぼ見当たりません。
理由の一つとして、現世代の「i3」や「Ryzen 3」のポジションが以前と根本的に変わっていることが挙げられます。
今のCore i3は第7世代のCore i7 7700Kよりも高い
これは実際の話で、Intel Core i3-14100の性能ベンチマークスコアは、かつてハイエンドの代名詞だったCore i7-7700Kを上回っています。世代が進むにつれてCPUの性能は格段に向上しており、「3」という数字が「低性能」を意味する時代は終わりました。
しかしそれにもかかわらず、なぜゲーミングPCに「3」シリーズが採用されないのか。それには製造・コスト・市場戦略の複合的な理由があります。
なぜ「3」のモデルがゲーミングPCに全然ないのか?
IntelもAMDも「3」に対するやる気がない
IntelとAMD、両社にとって「3」シリーズは旨みの少ないカテゴリです。開発・マーケティングリソースを「5」「7」「9」の上位モデルに集中させる方が、利益率・ブランド訴求・話題性の面で有利です。「3」は設計そのものは上位モデルと共通しながら、コア数やキャッシュを削減したダウングレード品であるため、開発コストは節約できません。それでいて売れる数が限られているため、メーカーとしての優先度が低いのです。
歩留まり率の話:TSMCの技術向上でRyzen 3が出なくなった
「歩留まり率」とは、製造したチップのうち正常に動作するものの割合のことです。かつては製造工程の精度が低く、不良品が多く出ていました。その不良品を「完全動作ではないが、機能を制限すれば使える」という形でコア数・クロック数を落として販売したのが「3」シリーズの一側面でした。
しかし現在のTSMC(世界最大の半導体受託製造メーカー)の製造技術は飛躍的に向上し、歩留まり率が大幅に改善されました。つまり「下位製品向けに使う不良品」が減ったことで、わざわざ「3」を作る必要性が低下したのです。特にAMDのRyzen 3は、この理由もあって新世代では事実上ラインナップから消えつつあります。



製造技術が上がって品質が均一化されたから、「低性能版として売るための不良品」が減ったということだね。皮肉なことに、技術が進歩したことで「安いモデル」が作りにくくなった。
かえってコスパが悪いという逆転現象
Core i3やRyzen 3は、製品の性格上「5」や「7」より安くなければなりません。しかし製造コストはほぼ同じです。その結果、利益率を確保しようとすると、思ったほど安くできないという逆転現象が生まれます。さらに、グラフィックボード(GPU)が本命のゲーミングPCでは、CPUにボトルネックが生じると性能が台無しになります。コスパを考えると「少し高くても5を買った方が長く快適に使える」という判断がBTOメーカー側にも生まれ、「3」を採用した製品ラインナップを作らなくなったのです。
現在の「3」は旧世代の「5」や「7」が肩代わりしている
「安いゲーミングPCが欲しい」というニーズに応えているのは、現在では「旧世代のRyzen 5・Ryzen 7」です。例えばRyzen 5 5600X(Zen3世代)は、2021〜2022年当時は1.5万円前後のミドルレンジ品ですが、現在は中古市場で6,000〜9,000円程度で流通しています。ゲーム性能は現行Ryzen 3よりも高く、コスパは圧倒的です。
では安いゲーミングPCが欲しいなら何を買えばいい?
「できるだけ安くゲーミングPCを作りたい」という人に向けて、2026年4月時点での現実的な構成を紹介します。ポイントは「新しい安いCPU」ではなく「一世代前の高性能CPU」を使うことです。
格安ゲーミングPC構成例(旧世代Ryzenを活用)
以下は、2026年時点で新品・中古市場を組み合わせた現実的な格安ゲーミングPC構成例です。
| パーツ | 選択例 | 価格目安(2026年4月) |
|---|---|---|
| CPU | Ryzen 5 5600X(中古) | 8,000〜10,000円 |
| マザーボード | B550チップセット(新品・中古) | 10,000〜15,000円 |
| メモリ | DDR4 16GB(8GB×2) | 5,000〜7,000円 |
| GPU | RX 6600 または RTX 3060(中古) | 20,000〜30,000円 |
| SSD | NVMe 500GB〜1TB | 5,000〜8,000円 |
| 電源 | 650W 80PLUS Bronze | 6,000〜9,000円 |
| ケース | ATXミドルタワー(汎用品) | 4,000〜7,000円 |
| 合計 | – | 約58,000〜86,000円 |
この構成でフルHD(1080p)でのゲームプレイなら、ほとんどのタイトルで60fps以上が期待できます。Ryzen 5 5600XはZen3アーキテクチャの完成度が高く、2026年時点でも現役で通用するゲーミング性能を持っています。



「安くゲーミングPCを作る」なら、最新の「3」を探すより旧世代の「5」や「7」を狙う方が断然賢い。性能も価格も圧倒的に有利だよ。
BTOで買う場合の最低ライン
自作が難しい場合、BTOメーカーでも旧世代Ryzen 5搭載モデルが7〜9万円台で購入できます。パソコン工房やドスパラのアウトレット・整備済み品コーナーも要チェックです。「最新世代の安いCPU」よりも「一世代前の実績あるCPU」を選ぶことが、コスパの高いゲーミングPC選びの鉄則です。
Core i3 / Ryzen 3が活躍できる場面(ゲーム以外)
「3」シリーズがゲーミングPCに向いていないからといって、存在価値がないわけではありません。むしろ適切な用途に使えば、非常にコスパの高い選択肢です。
事務用PC・ビジネス用途
Word・Excel・PowerPoint・ブラウザ・メール・Zoom会議といったビジネス用途では、Core i3やRyzen 3は完全に十分です。オフィスワークでは高いマルチコア性能より、シングルコア性能とTDP(消費電力)の低さが重要になります。i3やRyzen 3は省電力で動作が安定しており、ビジネスPCとして最適なポジションにいます。企業向けのBTO PCやNECのビジネス向けラインナップには、今でもi3搭載モデルが存在します。
プログラミング学習用
Pythonや JavaScript、Webアプリの開発学習レベルであれば、Core i3やRyzen 3の性能は過不足ありません。VSCodeの起動・コードのビルド・ローカルサーバーの実行程度なら快適に動作します。ただし、機械学習(PyTorch・TensorFlowの本格的なモデルトレーニング)やDockerを多用した複雑な開発環境では、i5以上が推奨されます。「まずプログラミングを始めてみたい」という入門段階には十分なスペックです。
軽いクリエイター用途
写真の現像(Lightroom・RawTherapee)・短い動画のカット編集・ブログ記事の執筆・イラストのライトな制作(GIMP・Krita)といった用途では、Ryzen 3やCore i3でも十分実用的です。4K動画の本格編集・After Effectsでの複雑なモーショングラフィックス・大量のRAW現像バッチ処理などは厳しくなりますが、趣味レベルのクリエイター活動には問題ありません。



「3」シリーズがゲームに向かないのは事実だけど、事務用途やプログラミング学習には普通に優秀。「用途に合ったCPUを選ぶ」という視点が大切だね。
2026年のCPU市場最新動向
2026年4月時点のCPU市場は、Intel Arrow LakeとAMD Zen 5という新世代が出揃い、旧世代の位置づけと価格が再編される過渡期にあります。
Intel Arrow Lake(Core Ultra 200シリーズ)の状況
2024年末に登場したIntel Arrow Lake(Core Ultra 200Sシリーズ)は、新アーキテクチャ「Lion Cove」を採用し、省電力性能の大幅な改善を実現しました。しかし登場当初はゲーム性能でRaptor Lake(Core i9-14900K等)を下回る場面も見られ、コミュニティでは賛否が分かれました。その後のマイクロコード・BIOS更新でゲーム性能は改善しており、2026年時点では安定した選択肢になっています。
特筆すべきは、Arrow LakeではHyper-Threading(ハイパースレッディング)が廃止されたことです。これはIntelの設計方針の大転換であり、ゲーム用途ではシングルコア性能の向上によって補われています。価格帯はCore Ultra 5(旧i5相当)が5万円前後、Core Ultra 7(旧i7相当)が7〜10万円前後となっています。
AMD Zen 5(Ryzen 9000シリーズ)の状況
AMDは2024年に「Ryzen 9000シリーズ」(コードネーム:Granite Ridge)でZen 5アーキテクチャを投入しました。IPC(クロックあたりの処理性能)が前世代Zen 4比で16〜17%向上しており、特にシングルスレッド性能の伸びが顕著です。ゲーム性能ではIntelと互角以上の場面も増え、消費電力の優位性も維持しています。
価格面では、Ryzen 5 9600X(6コア)が4万円前後、Ryzen 7 9700X(8コア)が6万円前後で推移しており、コスパの観点からもAMDが優位な状況が続いています。一方、Ryzen 3シリーズはZen 5世代では事実上存在せず、エントリー向けは旧世代Zen 4のRyzen 5 7600(廉価版)が担っている状況です。
性能対価格の現在地:2026年の最適解
2026年4月時点でのコスパ最優秀CPUは、用途別に以下のように整理できます。
| 用途 | おすすめCPU | 価格目安 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 格安ゲーミング(自作・中古) | Ryzen 5 5600X(中古) | 8,000〜10,000円 | 旧世代だが十分な性能・圧倒的コスパ |
| ミドルレンジゲーミング | Ryzen 5 9600X | 約40,000円 | Zen 5の最新アーキテクチャ・高効率 |
| ハイエンドゲーミング | Ryzen 7 9700X / Core Ultra 7 | 60,000〜100,000円 | 将来性・マルチ性能も高い |
| 事務・プログラミング学習 | Core i3-14100(新品) | 20,000〜25,000円 | 省電力・安定・十分な性能 |
| 予算重視の事務用 | Ryzen 5 5600(中古) | 6,000〜8,000円 | 極めて安く・性能は十分 |



Zen 5世代になってもRyzen 3は事実上消えたまま。「3」の需要はAMDも見切っているということだね。安いゲーミングPCを作りたいなら、旧世代のRyzen 5が圧倒的に正しい選択だよ。
結論:多機能・複雑化の罠を回避せよ
ゲーミングPCにCore i3やRyzen 3が存在しない理由は、製造技術の向上・メーカーの戦略・コスパの逆転現象が複合的に絡み合った結果です。「3」という数字が示す「エントリー向け」というポジションは、旧世代の「5」や「7」がより安価・高性能で担うようになり、存在意義が薄れました。
「安くゲーミングPCを手に入れたい」という目標に対して、最新の低グレードCPUを探すよりも、一世代・二世代前の中堅CPUを使った構成の方が、性能・コスパ・将来性のすべてで勝ります。
| 知っておくべきポイント | 内容 |
|---|---|
| Ryzen 3・Core i3がゲーミングPCにない理由 | 製造コスト・歩留まり改善・コスパ逆転の三重苦 |
| 安いゲーミングPCの正解 | 旧世代Ryzen 5(5600X等)の中古活用 |
| Core i3が活きる場面 | 事務用PC・プログラミング学習・軽いクリエイター |
| 2026年の最新動向 | Arrow Lake(Intel)・Zen 5(AMD)が主流。「3」は事実上消滅 |
| 格安ゲーミングPCの総額目安 | 自作なら6〜8万円程度が現実的 |
「CPUの番号が小さければ安い」という発想は、もはや通用しません。番号ではなく、世代・用途・コスパのバランスで選ぶことが、2026年時点での賢いPC選びの基本です。

