「メタバース」という言葉が世に出て久しいですが、皆さんは実際にどれくらい活用していますか?
多くの人が「メタバース」と聞いて期待を膨らませたものの、現状は「なんか思ってたのと違うな…」と感じているのではないでしょうか。
VRヘッドセットが高すぎるから?よく分からないから? そういった理由ももちろんありますが、実はそれだけではない、もっと深い理由があるんです。

それは、今のメタバースの構造そのものに問題があるから。
今回はその核心に迫っていきます。
メタバースが本当に普及しない理由
メタバースが普及しないのは、VRの価格が高いとか、そもそも何をするのか分からない、といった表面的な理由に思われがちです。
でも、実は「メタバース」という言葉自体は、多くの人が知っているんですよね。
本当の答えは、プラットフォームのあり方に隠されています。
今、世の中には「Cluster(クラスター)」や「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」「Horizon Workrooms(ホライゾン・ワークルームズ)」など、様々なメタバースプラットフォームが存在します。



これを見て気づくことはありませんか?
そう、プラットフォーム自体が分散していることです。
この「分散」という言葉は、WEB3の文脈では良い意味で使われがちですが、現状のメタバースにおいては、デメリットの方が目立っています。
なぜなら、その分散は、「主役が利用者ではなく、運営」であるという、これまでのウェブサービスと同じ構造を繰り返しているからです。
WEB3の考え方では、「サービスが終了しても、所有物は所有者のもの」という素晴らしいメリットがあります。
しかし、ここには大きな落とし穴が一つあります。
分散におけるデメリット
サービスが無くなってしまうと、その所有物は他の場所で使い回すのが難しい、という大きな欠点を抱え込んでいるんです。
たとえば、あるゲームで手に入れた最強の剣があったとします。
そのゲームがサービス終了したとしても、所有権はあなたのものです。
でも、その剣を別のゲームで使えるかというと、残念ながらほとんどの場合使えませんよね。
これと同じことが、今のメタバースでも起こっています。
特定のプラットフォームで買ったアバターやアイテムは、そのプラットフォームが終了すれば、価値が無くなってしまう。
所有権は持っているけれど、結局は使い道がないので意味がない、という状況に陥ります。
だからこそ、私は特定の場所でしか使えないものを所有するよりも、万能で使い回せるものの方が圧倒的に価値があると考えています。
メタバースの運営は会社の事業とあまり相性良くない
メタバースは、企業の事業として運営していくには、実はあまり相性が良くないんです。
その理由は大きく分けて二つあります。
- 費用対効果が低い
- 生活に必要なものとは言えないから
まず、開発にかかる金額がすごく高い。
特に、人件費とサーバー代が莫大にかかります。



さすがにこんな難しい作業を最低賃金とかは来るとはありえんよ
にもかかわらず、自社製品との繋がりを明確に見出しにくいのが現状です。



以前の記事でも見たけど、そもそももう消費する時代じゃないんだよな
私が構想する3DCG Gen2の資産の仕組み


そして、もう一つの理由は、「生活に必要不可欠ではない」ということです。
ゲームは「娯楽」という明確な目的があったから売れました。
でも、メタバースの場合は「何をする場所なのか?」がはっきりとしない。
だから、お金を払ってまで参加する明確な理由が見つけにくいんです。



実際に成功しているフォートナイトやロブロックスも、あれはメタバースというよりゲームそのものとして認識しているから
この二つの理由を合わせると、「メタバースって、そもそも個人が運営するほうが有利なものなんじゃないか?」という結論にたどり着きます。
私はメタバースの利用者よりエンジンの構造をどうにかしたほうが良い
辛辣な言い方かもしれませんが、メタバースでゲームのようにビジネスをするのは無理だと思っていい。
会社の帰属意識はもうない



まずね、ここなんだけど…盲点かも
現代社会において「会社への帰属意識」が薄れているからです。
私たち現代人は、「会社のために売上を上げよう」という意識をあまり持っていません。



だって頑張っても給料上がらんしな
副業が当たり前になり、自分のスキルを直接お金に変える時代になりました。
会社が作ったプラットフォームで稼ぐのではなく、自分の力で自由に稼ぎたい。
そういう考えの人が増えているんです。



だから、個人でゲーム開発をしている人が増えているのか?



そうだね、やはり就職も無理だし、最近だと競争も激しいのでそれなら自分でつくろうという人が多い
この時代の変化を考えると、企業が提供するプラットフォームに縛られるのは、利用者にとって全く魅力的に映りません。
プラットフォームに縛られない、持続可能な流用しやすい環境を
だからこそ、私はUnityのようなゲームエンジンではなく、メタバースを作るための「エンジン」を新しく作り、メタバースは個人が所有、運営するのが良いと考えています。
イメージとしては、WordPressのようなものです。
WordPressは、ドメイン(インターネット上の住所)を取得し、そこにWordPressというソフトをインストールすることで、誰でも自由にウェブサイトを運営できますよね。
デザインもプラグインも、すべて自分の好きなようにカスタマイズできる。



ただ、プラグインは理解しにくいのでここではMODといおう。
これまでのブログサービスのように、提供元がサービスを終了したらブログが消えてしまう、なんて心配もありません。
これと同じように、メタバースも個人が自由に管理できる「エンジン」を開発すべきなんです。
これまでのプラットフォームは、管理が企業だったので、利用者は「完全に所有している」という感覚が持てませんでした。



しかもそれぞれ独特な操作感もあるので、違うところに行こうとしてもまた覚え直さないといけない。
今のゲームエンジンも、そういう設計になっていないため、運営側が色々と工夫してくれていますが、根本が違う。
このプラットフォームだから、という構想に縛られるし、運営側に利益が偏るので、利用者からすれば魅力に欠けるんです。
国際線の飛行機のように移動しやすい環境へ
今のメタバースは、まるで鎖国のような状態です。
それぞれのプラットフォームが独立していて、アバターやアイテムが、その一つの「国」の中に閉じ込められています。
これは、「他のプラットフォームに行くこと」を想定していないからです。
簡単に言うとマイクラの世界からマリオの世界へ引っ越すというようなもの。ぐらい実現性がない。
だから、せっかく作ったアバターも、別のメタバースでは使えない。



私は、この現状を変えたい。
一つの世界に留まるのではなく、いくつかのメタバースのワールドを自由に移動できるようにするべきだと考えています。
具体的には、ウェブサイトを複数運営するのと同じように、複数の拠点を持つイメージです。
あるワールドでは仕事をして、別のワールドでは友人と遊ぶ。
行き来はまるで国際線の飛行機のようにスムーズに。
これこそが、本当の意味でのメタバースであり、利用者が本当に求めている世界なのではないでしょうか。
まとめ
メタバースが普及しない本当の理由は、VRの価格や知名度だけではありません。
「中央集権的なプラットフォーム」という、これまでのインターネットの構造をそのまま引きずっていることにあります。
運営が主役で、利用者は消費者に過ぎない。
所有物はプラットフォームに縛られ、費用対効果は低い。
こうした問題を解決しなければ、メタバースは本当に私たちの生活に溶け込むことはありません。



解決策は、「個人が主役」のメタバースを、誰でも簡単に作れる環境を整えること。
WordPressのように、個人が所有・運営できる「メタバースエンジン」を開発し、アバターやアイテムが自由にプラットフォームを移動できる仕組みを作る。
これが実現したとき、私たちはようやく、真の意味で「もう一つの現実世界」を手に入れることができるはずです。