最近、「メタバース」という言葉をよく耳にするようになりました。
Facebookが社名を「Meta」に変更したり、さまざまな企業が参入を表明したりと、その勢いは増すばかり。でも、現状作られているメタバースって、なんだかピンとこないと思いませんか?
「フォートナイト」や「ロブロックス」が成功例としてよく挙げられますが…

あれって結局「ゲーム」ですよね。



メタバースって、もっと違うもののはず。
どうして今、私たちがイメージするような「もう一つの現実世界」は生まれてこないのでしょうか?
その最大の理由の一つが、



「メタバースに特化した専用のソフトウェア(エンジン)」
がまだないということです。
「いやいや、UnityとかUnreal Engineとか、ゲームエンジンがあるじゃないか」と思うかもしれません。
もちろん、それらは素晴らしいツールです。
でも、今のゲームエンジンをそのまま使っても、本当の意味でのメタバースは作れない。
この記事では、なぜメタバースには専用のエンジンが必要なのか、そしてこれからどのように作られていくべきなのかを、分かりやすく解説していきます。
今作られているメタバースは?


今、世の中にある多くのメタバースは、Unityが多く使われています。



Unityは、もともとゲームを作るために作られたソフト。
3DCGの扱いが得意なこともあり、多くの企業やクリエイターが利用しています。
もちろん、メタバースでも使われていますが、実態としてあまりうまくいっているとは言えません。
先ほど触れた「ロブロックス」や「フォートナイト」は確かに成功していますが



あれらはあくまで「ゲーム」がメイン。
メタバースという世界の中でゲームを楽しむ場であって、メタバースそのものが主役ではありません。
多くの企業が、ゲームの延長線上にあるようなメタバースを作ろうとしていますが、これがそもそもの間違いなのかもしれません。
なぜなら、ゲームとメタバースは、似ているようで全く違うものだから。
ゲームエンジンはこれから特化だらけになる


なぜメタバースには別でエンジンが必要なのか?
メタバース用に専用として作ったほうがいい理由はいくつかあります。
ゲームは決められた内容、メタバースはフリーダムだから



まず、ゲームとメタバースの最大の違いは、「自由度」。
ゲームは、開発者が用意したシナリオやルール、アイテム、そしてゴールがあります。
プレイヤーは、その決められた枠組みの中で楽しむのが基本。
RPGなら物語を進めてボスを倒す、アクションゲームなら敵を倒してステージをクリアする、といったように、楽しみ方が設計されています。
これは、いわば「電車」のようなものです。
決められたレールの上を走ることで、目的地にたどり着くことができます。



一方、メタバースは、これとは全く逆の発想。
メタバースには「ゴール」がありません。そして、「ルール」もありません(もちろん、最低限のマナーは必要ですが)。
ユーザーは、そこで何をするか、どう過ごすか、すべて自由に決めることができます。
それは、まるで「広大な大地」のようなもの。



つまりはオープンワールド的みたいなもの?
どこに行くか、何をするか、すべて自分で決めることができる。
今のゲームエンジンは、「レールを敷く」ことに特化しています。
だからこそ、ゲーム開発には向いている。
しかし、何もない大地を自由に創造するためには、全く違う設計思想が必要になります。
ゲームは消費者、メタバースは制作者が主役
今のビジネスの基本は、「クリエイターが作ったものを消費者が購入する」という形です。
ゲームも、ゲーム会社が作ったゲームを、ユーザーがお金を払って購入し、遊びます。
これは、一方通行のビジネスモデルです。
けれどメタバースでは、このモデルは通用しません。
なぜなら、メタバースでは「ユーザー自身がクリエイター」だから。
ユーザーは単にコンテンツを消費するだけでなく、自分自身でコンテンツを生み出したり、空間を作り上げたりします。


たとえば、マインクラフトの世界を想像してみてください。
あのゲームは、プレイヤー自身が自由にブロックを組み合わせて、家を作ったり、街を作ったりしますよね。
まさに、ユーザーが創造する世界です。
メタバースもこれと同じで、ユーザーが主体となって世界を形作っていく場所なんです。
現在のゲームエンジンは、どうしても「クリエイターが作るものを、ユーザーが遊ぶ」という前提で作られています。
そのため、ユーザーが自由に何かを創造したり、販売したりする仕組みが、うまく組み込まれていません。
今のゲームエンジンだと一般の人には作業に感じさせられるから
UnityやUnreal Engine 5(UE5)といったゲームエンジンは、非常に高機能です。
しかし、それは「プロ」が使うことを前提に作られているから。プログラミングの知識や、複雑な操作を覚える必要があります。個人が趣味で使うには、かなりハードルが高いと感じる人が多いでしょう。



「プログラミングとか誰が理解できますかー?」
って、正直なところ、多くの人がそう思っているはずです。
私だって、簡単なプログラミングはAiならできますけど、それでも正直めんどくさいなって思うことは多々あります。
私たちが本当に求めているのは、まるでゲームをプレイする感覚で、メタバースという世界を自由に作れるようなツールです。
例えるなら、マインクラフトのように、ブロックを置いたり、アイテムを使ったりする感覚で、世界を創造できたら最高ですよね。
今のゲームエンジンは、どちらかというと「作業」に感じられてしまいます。
メタバースが普及するためには、この「作業感」をなくして、もっと直感的で、誰でも楽しめるような仕組みが必要不可欠です。
ゲームは娯楽、メタバースは生活
ゲームは、私たちの「娯楽」です。
暇な時間や気分転換に楽しむもの。
遊園地に行くような感覚に近いかもしれません。
一方で、メタバースは、私たちの「生活」そのものになります。
セカンドハウスのように、そこに自分の居場所を作り、友人や家族と過ごしたり、仕事をしたり、買い物をしたり。
将来的には、スマートフォンやパソコンの「OS(オペレーティングシステム)」のような存在になるかもしれません。
ゲームエンジンは、遊園地の乗り物を作るための設計図です。それはそれで素晴らしいのですが、私たちの生活の基盤となる世界を作るには、全く別の設計図が必要になります。
そもそもメタバースをするなら3DCGそのものに構造の革命が必要
根本的な話をすると、メタバースが本当に普及するためには、3DCGそのものの構造を抜本的に変える必要があります。
現在のゲームエンジンは、その「エンジン」というソフトに従って3DCGを動かしています。



言い換えると、3DCGはエンジンの「操り人形」のような存在です。
エンジンが指示を出さないと、3DCGは動くことができません。
メタバースの世界は、フリーダムです。
つまり、誰かの指示を待つのではなく、3DCGそのものが自律的に動いたり、ユーザーとコミュニケーションをとったりする必要があります。
私は今、3DCG Gen2というものを開発していますが、これはメタバースを想定して作っています。


現在の3DCGは、実は1960年代に登場した技術で、60年以上も進化していないんです。
プログラミングや動画技術はどんどん進化しているのに、3DCGだけは見た目は変えども構造は昔のまま。
この古い技術が、メタバースの足を引っ張っている。
だからこそ、一度ゼロから見直す「革命」が必要なんです。
これまでのゲームにおける3DCGは、まるで巨大な図書館のようでした。
すべての本(データ)が中央のサーバーに集められていて、そこから必要なものを読み出して使っていました。
でも、これからは、本そのものが自分で動き出すような、分散型の仕組みが必要です。
この分散化こそが、自由なメタバースを生み出す鍵になります。
これからどのようにメタバース用のエンジンを作ればいいか?
今の時代、生成AIを使えば、個人でもかなりのものが作れるようになってきました。
だから、自作していくのもおすすめですよ。ここでは、従来の3DCGを前提に、メタバース用のエンジンを作るためのポイントをいくつか紹介します。
ゲーム制作とゲームプレイを合体させる
これまでのゲーム開発では、開発者は「エディター」というソフトを使って、まるで神様が世界を見渡すように開発をしてきました。
プレイヤーは、その世界の中に入って遊ぶだけでした。
でも、メタバースのエンジンを作るなら、このやり方を変える必要があります。
「ゲーム制作とゲームプレイを合体させる」んです。
プレイヤーが世界の中で遊んでいる間に、そのまま世界を創造したり、新しいアイテムを作ったりできるようにする。
これによって、開発者とプレイヤーの境界線がなくなり、誰もがクリエイターになれる世界が実現します。
自分が政治家(国王)という視点を持つ
ゲームエンジンは、開発者が「クリエイター」という視点で作るものです。しかし、メタバースエンジンは、自分が**「政治家」や「国王」という視点**を持って作る必要があります。
国王は、国民(ユーザー)が暮らしやすいように法律を定め、インフラを整備します。同様に、メタバースエンジンの開発者は、ユーザーが自由に創造したり、生活したりするための「土台」や「ルール」を設計します。
たとえば、アバターの制作ツール、アイテムの売買システム、コミュニケーションツールなど、ユーザーがより快適に過ごせるような仕組みを整えることが重要です。
細分化した最適なメタバースエンジンを提供する
今のゲームエンジンは、とにかく巨大で多機能すぎます。
だから、もっと**「細分化」**して、特定の目的に特化したエンジンを作っていくのがおすすめです。
例えば、「VRライブ特化型メタバースエンジン」「バーチャルオフィス特化型メタバースエンジン」「バーチャル教育特化型メタバースエンジン」など



それぞれの用途に合わせたエンジンを開発する。
これにより、動作が軽くなったり、必要な機能だけを厳選して使えるようになったりします。
私も、メタバース用だけど色々なバージョンを出すことを検討しています。
何を目的に作るためなのか?を明確に作る
これまでのゲームエンジンは、「自分だったらこういう機能があったら便利だな」という開発者の思いつきで、どんどん機能が追加されてきました。しかし、これが原因で動作が重くなったり、不具合が多くなったりすることもあります。
メタバースエンジンを作る際には、「何を目的に作るのか?」を明確にすることが非常に重要です。
「ユーザーが自由に自己表現できる世界を作る」「ユーザー同士が交流できる空間を作る」「新たなビジネスを生み出すプラットフォームを作る」など、目的を一つに絞ることで、本当に必要な機能だけを厳選して実装できます。
まとめ
メタバースは、単なるゲームの延長線上にあるものではありません。
それは、私たちの新しい生活の場であり、新たな創造の場です。
だからこそ、ゲームとは全く異なる設計思想を持つ、専用のエンジンが必要です。
今のゲームエンジンは、遊園地の乗り物を作る設計図です。
しかし、私たちが本当に必要としているのは、そこで暮らすための家や街を作るための設計図なんです。
誰でも簡単に、楽しく、自由に創造できる世界。それが本当のメタバースの姿です。
そのために、私たちは新しい技術を生み出し、古い常識を壊していく必要があります。
これからどんなメタバースエンジンが生まれてくるのか、すごく楽しみですね。